地域で母子家庭を助ける「みんなの冷蔵庫」を設置したい!
コロナ禍で経済的困窮を受けている母子家庭に対して支援したいと考えています。 チャリティー美術展を開催し、クラウドファンディングを通じてご支援いただくことで「みんなの冷蔵庫」(必要な食料や日用品を受け取れる)を設置します。 チャリティー美術展は、母と子の「きずな」をテーマに作品を描いた日本画家 高屋肖哲(たかやしょうてつ)の展示です。みなさまのあたたかいご支援をどうかよろしくお願いいたします。
コロナ禍による窮地 母子の経済的困窮をうけて支援を決意
「100年に一度の危機」ともいわれる新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会から一定の距離をとり、ひっそりと暮らしている母と子に経済的困窮という大きなダメージを与えています。先進国における日本の「子ども貧困率」(OECD算出基準)は2015年において13.9%(子どもたちの約7人に一人)が貧困であり、一人親世帯では50.9%(2人に一人以上)が貧困の状態(厚生労働省)にあります。
貧困は、さらに負の連鎖をもたらし、閉塞した家庭内では子どもの虐待につながりやすく、悲惨な事件の大きな要因となっています。日本では特に母子世帯の収入の低さが際立っており、何らかの支援が必要なのです。現在、南魚沼市では約160世帯が生活保護を受けています。しかし、この中に母子世帯が含まれることは極めて少なく、年度によってはゼロであることが分かりました。
これは何を意味しているのでしょうか?
もちろん、はっきりとしたことはわかりません。しかし、南魚沼地域の母子世帯が他の地域に比べて収入が多く、生活に困っていないということは考えにくいと思います。むしろ、生活を切り詰めて何とか凌いでいると考える方が納得的ではないでしょうか。
なぜ、「みんなの冷蔵庫」が必要なのか
現在の日本は、母と子だけの力で経済的困窮を打開することが困難な状況に陥っているといっても過言ではありません。
日常生活を維持するためには、食事は重要な意味を持ちます。
そのため、必要な食料品を引け目を感じることなく、手に入れることが可能な方法として「みんなの冷蔵庫」の設置を考案しました。
「みんなの冷蔵庫」は、モノとキモチの交換所
私たちが目指している「みんなの冷蔵庫」は、モノ(食料品)とキモチ(感謝)が自然に交流、交換できる場所ともいえます。
南魚沼市では人と人のつながり、助け合いが定着しています。すなわち、必要とする人が必要なものを引け目なく、支援者に感謝の気持ちをもって受け取るとこが可能な素地を備えているのです。
モノ(食料品など)を基本とした「贈る側」と「受け取る側」の固定した関係から、キモチ(感謝など)を含めることで、逆転の関係を可能にします。私たちは、モノとキモチの交換の場所としての「みんなの冷蔵庫」を実現したいのです。
母と子の「きずな」を描き続けた日本画家、高屋肖哲とは
国民の生活が経済性で2分され、一方、戦争政策で平和がゆらいでいるわが国に、さらにコロナ災が襲い、生活苦が貧しき子たち(家庭)にしわ寄せされ、不幸な子や不幸な母が急増しています。
ここに私たちは、千児観音という一枚の仏画に出会いました。一児観音といえば、明治初期の有名な狩野芳崖の悲母観音(一児観音)です。
この狩野芳崖の四大弟子の一人で芳崖の志を継いだ唯一の画家です。高屋肖哲が千児観音を描き切りました。
高屋肖哲は慶応2年生まれ(1866~1945)、一人笈を背負い、日本画家を目指して上京し、狩野芳崖に師事し、現国立東京芸術大学の一期生となりました。卒後教壇に立つもこれに飽きたらず市井に埋もれ、寺院に寄寓し、観音図作成に没頭しながら、日本美術界表層から姿を消して行きました。
私たちが高屋肖哲に出会ったのは2018年東京の泉屋博古館分館で企画された「狩野芳崖と四天王展」でした。
観音の膝下に群集する千児を描きました。その千児が救いを乞うだけでなく、「一体の観音」を生み出したのではないかと大きな衝撃に襲われました。
この日から私たちの「高屋肖哲千児観音チャリティ美術展」活動が始まりました。
千児が生み出した新しい悲母観音は、万児を幸せにすることを信じて、新潟県の魚沼の小さな「南魚沼市立池田記念美術館」で来春開催することになりました。
また肖哲は一生を懸けて、ものにつかれたように観音を描きつづけ、苦悶の末、晩年悟りを得たように面様、肢体、持物の異なる十種観音(下絵)を得ました。肖哲はこの十種観音図を秘蔵すべきものとして、己の魂を傾注した遺作としました。
さらに肖哲は密教の世界を表す両界曼荼羅図(特定された作品は残っていない)を描き、千児観音図と十種の正観音図を3大遺作と記しています。
本展覧会では、高屋肖哲の生涯と志に想いをはせて、千児観音図、十種観音図を中心に、肖哲の代表的な国宝の模作、普賢菩薩像(東博所蔵)を配し、両界曼荼羅図も添えて構成することになりました。
実は肖哲は国宝級の模作も国の仕事として取組み、日本の美術品を後世に伝える大きな仕事もしています。
その一作が「国宝普賢菩薩像」です。
なお、この企画を推進した私たちの一人黒岩卓夫は、時代も異なり第二次世界大戦の世代ですが、戦後の貧困から医師をめざし、大学での医療に疑問を持ち東京から雪深い市井に埋もれ、地域医療の大きな流れをつくった医師であり、今回の企画も高屋肖哲に共鳴し、尊敬する者であることを御理解していただければと思います。
高屋肖哲と「みんなの冷蔵庫」
高屋肖哲は、名声から距離を置き、自らの信じる道(仏画を極める)ことによって次世代の発展を願い、観音図を(お寺にこもり)描き続けました。
そして、師匠である狩野芳崖のテーマである、「母が子を愛する慈愛の思い」を一途に極め、独自の世界観で「千児観音」を製作したのです。
肖哲の「次世代の発展への願い」は、本プロジェクトの「(母と子)貧困に対する支援」(お寺に「みんなの冷蔵庫」を設置)の理念において相通じるものがあります。
「高屋肖哲」研究者の協力
本プロジェクト実施にあたり、「高屋肖哲」研究の第一人者でその端緒を開き、作品・資料のリスト作成、日記の翻刻などに携わられたお二人に直接、作品をご覧頂き、肖哲の「十種観音図」であることを確認して頂きました。
お二人は、師の芳崖関係者の間で名は知られていましたが、当時の画壇との交渉を絶ち、美術史の表面から忘れられていた高屋肖哲の生涯の事績をあとづけ、研究報告書としてはじめて世に出した方々です。
研究者としてのお二人に深く敬意を表するとともに感謝申し上げます。